1955年 東映(京都)
白黒/スタンダード/モノラル/94分
終戦間際に満洲に渡り、以来8年ほど中国で抑留生活を送った内田吐夢監督による帰国後第一作。千恵蔵演じる槍持ちの権八と加東大介演じる源太は、主人が江戸に向かうお供をする。道中での大泥棒騒動や、酒癖の悪い主人とお供たちの攻防、浮浪児や母娘との交流などを描き、喜劇や人情ものの趣もあるが、クライマックスで千恵蔵が見せるのたうち回るような激しい殺陣場面は壮絶のひとこと。本作は肺と胃を病んで帰国した内田監督を心配し、溝口健二や小津安二郎、清水宏、伊藤大輔といった仲間が、『道中悲記』(1927、井上金太郎監督)のリメイクを提案したことから生まれた。サイレント期から活躍する巨匠監督の久方ぶりの渾身の演出に、同じくサイレント期からのスターである千恵蔵が応えた。ラスト近くの場面では「海ゆかば」のメロディーが流れる。