1960年 東宝=黒沢プロダクション
白黒/シネマスコープ/モノラル/151分
黒澤が自身のプロダクションを起こして東宝と共同製作した作品。日本未利用土地開発公団による贈収賄事件の責任の一切を負わされ、やがて死に追いやられた公団の課長補佐の息子が、汚職のカラクリを暴くため、公団副総裁の女婿にして秘書となり、事件に関わった副総裁の部下たちを執拗なまでに追いつめてゆく復讐行為を描いている。この復讐劇がほころびを見せるのは、三船敏郎演じる復讐の鬼の、足が不自由な妻への優しさと、禁欲的なまでの愛情が、極点に達するときである。『隠し砦の三悪人』(1958)に続く、この白黒のワイドスクリーン作品は、戦後の政界に蔓延する汚職に切り込んだ、息もつかせぬサスペンス映画であるとともに、黒澤をはじめ小国、菊島、橋本、久板ら五人の脚本によって緻密に組み立てられた、見事な娯楽映画でもある。「キネマ旬報」ベストテン第3位。