1952年 大映(東京)
白黒/スタンダード/モノラル/87分
それぞれ父親の違う四人の子供たち。母はそれをそのまま受け入れて暮らしているが、末っ子の清子(高峰秀子)は姉や兄たちの身勝手で無気力な生き方に生理的な嫌悪を抱いている。山の手の世田谷で一人下宿生活を送っているのもそのためだ。次女の光子(三浦光子)が飼っている子猫のように、弱々しい生きものとして周りの世話になりたくないのだ。林芙美子の同名小説は1936年に発表されたもので、実母をモデルにしたものだと言われている。監督の成瀬巳喜男は、戦前の松竹時代から林芙美子に関心を抱いていたが、映画化の機会をもてないままであった。この作品は『めし』(1951)に続く林文学の映画化である。下町の庶民の姿をいたずらに劇化することなく、静かに見つめているところに特徴がある。田中澄江脚本。「キネマ旬報」ベストテン第2位。