彼岸花

彼岸花

1958年 松竹(大船)
カラー/スタンダード/モノラル/118分

解説

娘が勝手に決めてきた結婚相手に腹を立てる頑固な父親の姿をユーモラスに描く、小津安二郎監督初めてのカラー作品。小津監督の言によれば、父がなじみにしている京都の旅館の娘役として大映から招いた看板女優、山本富士子を活かした明るい映画にしたいという会社の方針もあって、色彩映画に手をつけたそうである。小道具や着物ひとつひとつに気を配り、赤が映えるアグファ・カラーをネガフィルムに用いて、色をはぶき、色があって色がないような、つまりは「色即是空、空即是色」の心持ちで撮影に臨んだと語っている。ドラマチックな展開を極力排除し、さりげない会話のやりとりの中に人間のエゴを垣間みせるこの監督特有の手法が、あでやかな色彩とともに、見るものの心に染み込んでくる。母娘を演じた浪花千栄子と山本富士子による京都弁の掛け合いもまた愉しい。里見弴は小津監督の敬愛する小説家で、原作は小津監督の映画化を予定して書き下ろされたものである。「キネマ旬報」ベストテン第3位。

スタッフ

原作
里見 弴
脚本
野田高梧
脚本・監督
小津安二郎
撮影
厚田雄春
照明
青松明
録音
妹尾芳三郎
音楽
斎藤高順
美術
浜田辰雄

出演者

平山渉
佐分利信
  清子
田中絹代
  節子
有馬稲子
  久子
桑野みゆき
三上文子
久我美子
  周吉
笠智衆
谷口正彦
佐田啓二
近藤庄太郎
高橋貞二
佐々木初
浪花千栄子
長沼一郎
渡辺文雄
河合利彦
中村伸郎
佐々木幸子
山本富士子